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茶道入門

04.茶会と茶事

❙はじめに ~ 茶会と茶事 ~

「茶道入門」では茶道に初めて触れる皆様が茶道の基本を学び、心を込めたおもてなしの精神を体験できるよう、茶道の基礎を全10項目にわたって、わかりやすく解説してご紹介しています。

 

本ページでは、茶道において重要な役割を果たす 「茶会」と「茶事」 についてご紹介します。

茶道には、季節や趣向に応じたさまざまな形式の「茶会」があり、茶道の心得を学ぶ場としての「茶事」も大切にされています。「茶会」は多くの人が参加し、和やかな雰囲気の中で茶を楽しむもの。「茶事」はより正式な形で、亭主と客人が一つの時間を共有し、懐石や点前を通じて茶道の真髄を味わうものです。

それぞれに異なる趣や作法があり、茶道の奥深さを知る上で欠かせない要素となっています。

本ページでは「茶会」と「茶事」の違いを紐解き、それぞれの形式や流れ、楽しみ方をご紹介していきます。

それでは、「茶会と茶事」について詳しく見ていきましょう。

❙茶会と茶事 ~ 茶会とは? ~

「茶会」とは飲茶を中心とした会で古くは「茶事」や「茶湯興行」とも呼ばれ、さらに遡ると「ちゃのえ」という表現も用いられていました。

その「茶会」の語源は唐代の詩人『銭起』の詩句に見られ、当時の文人たちが楽しんだ「喫茶の会」のことを指します。

日本における茶会の起源は中国・宋代の禅院における茶礼に基づいています。

「引茶(ひきちゃ/挽茶/施茶)」と呼ばれ、仏前に供えた茶の余りを衆僧に施す儀式として行われ、鎌倉時代には抹茶を用いた大茶盛などの形式も見られました。

鎌倉時代後期になると、各地で茶の栽培が盛んになり、闘茶と呼ばれる茶寄合が流行。やがて闘茶は衰退し、会所での茶会や、風呂で行われる「淋汗茶会」など、茶礼にとらわれない自由な形式の茶会が生まれました。

その後、室町時代には「書院茶」が主流となり、さらに「村田珠光の草庵茶」「武野紹鴎のわび茶」「千利休の茶道」と時代を経ることで、庶民へと茶の文化が広がりを見せます。千利休の茶道が確立すると、客を招き、点前(作法)をもって茶を振る舞う茶会の形式が定着しました。

今日の茶道において「茶会」と呼ばれるものには、大きく分けて以下の二つの形式があります。

❙茶事❙

茶道において正式な茶会は「茶事」と呼ばれます。

1~5名ほどの客人をもてなす少人数の会で、亭主は客人に「懐石料理」を供し、その後、中立と呼ばれる小休憩を挟んで、後席では「濃茶」および「薄茶」を点ててもてなします。

「茶事」は茶道の精神を深く味わう場として、最も格式の高い形式とされています。

❙茶会❙

今日において「茶会」と言えば、「茶事」から「懐石料理」を省略し、「濃茶」「薄茶」に「点心」を添えて客人をもてなす形式を指します。

また、茶道の普及とともに大規模な茶会も盛んに行われるようになり、100人以上の来客を迎える茶会(大寄茶会)も少なくありません。

茶道の伝統を継承しつつ、より多くの人々が気軽に茶の湯を楽しむ機会として、今日においても広く親しまれています。

❙茶会と茶事 ~ 茶事 ~

茶道において正式な茶会といえば、「茶事」を指します。

​茶事は、1〜5名ほどの客人をもてなす格式の高い会であり、単に茶を点ててふるまうだけでなく、茶道の真髄を体現する場とされています。

亭主は、茶室の設え、茶道具の取り合わせ、懐石料理の準備、炭点前、菓子、茶の点前に至るまで、すべての演出、作法を通じて客人をもてなし、客人もまた、その空間とひとときを深く味わいながら亭主の趣向と心遣いに応えることが求められます。

茶事の流れは、前席において「炭点前」や「懐石料理」が振る舞われ、その後、中立(小休憩)を挟み、後席で「濃茶」と「薄茶」を喫するというものです。

特に濃茶は、客人が一碗を回し飲むという形式がとられ、茶会の中でも最も重要なひとときとされています。

今日では、多くの人が気軽に参加できる大規模な茶会も開かれていますが、本来の茶事は茶道の深い心得が必要とされるため、茶道に精通した熟練者のみが招かれるのが一般的です。

茶道未経験者が茶事に招かれることはほとんどなく、亭主・客人ともに礼儀や作法、精神性を大切にしながら、一碗の茶を通じて心を通わせる特別な場となります。

茶事は「一期一会」の精神が最も色濃く表れる場であり、亭主と客人が互いに心を尽くし、その時その場でしか味わえない茶の湯の世界を創り上げます。

❙茶会と茶事 ~ 茶事七事 ~

茶事には、季節の移ろいや席入りの時刻、趣向によってさまざまな形があり、それぞれに約束や特徴が存在します。
そのなかでも、四季折々の風情や一日の時の流れに応じて客人をもてなす方法を変化させた七つの茶事を「茶事七式」といいます。

​以下に、「茶事七式」の種類とその特徴についてご紹介します。

❙正午の茶事❙

​茶事の基本であり、もっとも正式な形式とされる茶事です。

正午ごろを席入りの時刻とし、昼食を兼ねて行われます。四季を通じて催される茶事のなかでも、特に炉の季節(11月~4月)に行われる「炉正午の茶事」は、最も格式の高いものとされています。

❙朝茶(朝茶事)❙

初夏から秋にかけて催される茶事で、朝の澄んだ空気のなか、さわやかな気持ちで茶を楽しむのが特徴です。軽めの懐石とともに、薄茶が振る舞われます。

亭主は中門まで客を迎えに行き、無言で一礼を交わして席へと案内し、茶室へ入ると、夏の涼を感じさせる趣向が凝らされており、茶人たちにとって特に風情を楽しむ茶事のひとつとされています。

❙夜咄の茶事❙

冬の夕暮れ時から催される、夜長を楽しむ茶事で、「夜会」とも呼ばれます。

12月から2月ごろに行われることが多く、電灯の明かりは使わず、手燭の灯りや炉の熾火を楽しみながら、静寂のなかで一服の茶を味わいます。暗闇の中で五感を研ぎ澄ませることで、茶室の雰囲気や茶器の趣をより深く味わうことができ、最も風情に富んだ茶事のひとつとされています。

❙暁の茶事❙

「残灯の茶事」とも呼ばれ、夜明け前の静寂の中で催される茶事です。

昔は、夜を徹して茶席に臨むことがあり、その名残として「朝会」とも呼ばれることがあります。深夜から朝へと移り変わる空の色、鳥のさえずりや静かな露地の佇まいを楽しみながら、特別なひとときを味わうことができます。

❙飯後の茶事❙

その名の通り、食事の後に行われる茶事で、朝食または昼食の後に席入りし、軽い点心とともにお菓子をいただくことから、「菓子の茶事」「菓子会」とも呼ばれます。正式な茶事のように懐石料理を伴わないため、比較的気軽に催されることが多いですが、茶道の精神をしっかりと感じることができる貴重な機会でもあります。

❙跡見の茶事❙

茶事が終わった後、茶席に招かれなかった客人の希望に応じて、茶事の道具の取り合わせや趣向を見せるために催される茶事です。

跡見の茶事の趣旨としては、「今度行われる茶事に、すばらしい道具が出されるそうなので道具の拝見だけでもさせていただきたい」という客の要請に対して、「それならば簡単な席を設けましょう」というのが、典型的な形です。跡見の茶事では、通常の茶事と同様に一服の茶が振る舞われ、道具の来歴や趣向を語らう時間が設けられます。

❙臨時・不時の茶事❙

​通常、茶事は事前に客へ案内をしてから催されますが、臨時・不時の茶事は、突然訪れた客をもてなすために即興で行われるものです。

亭主の機転と茶道の技量が問われる場であり、決められた形式はなく、その時々の状況に応じて進められます。日頃の稽古の積み重ねが活かされる茶事であり、亭主のもてなしの心が試される機会でもあります。

​茶事七式は、単なる茶のもてなしではなく、時の流れや季節の移ろいを感じながら、亭主と客が心を通わせる場でもあります。

それぞれの茶事の持つ趣向を理解し、茶の湯の奥深さを楽しんでみてはいかがでしょうか。

❙茶会と茶事 ~ 茶事懐石 ~

正式な茶事の際、亭主が客をもてなすために供する食事を「懐石」といいます。

茶事において「懐石」は、「薄茶」「濃茶」を喫する前に出され、客の空腹を満たし、茶の味をより深く味わえるようにする役割を担っています。

「懐石」という言葉は禅の修行に由来し、修行僧が空腹や寒さをしのぐために火で温めた石を布に包み、懐に抱いていたことから名付けられました。そのため、懐石とは「空腹を一時しのぐための食事」という意味を持ち、茶道では献立、食作法、食器に至るまで一定の決まりが設けられています。

古くから「懐石は一汁三菜を過ぎないこと」といわれ、基本的には、汁一種、向付、煮物、焼物の三種の一汁三菜に、飯と香の物を添えたものが提供されます。

本来、茶事の亭主自らが料理し給仕をして客人をもてなしますが、近年では料亭や仕出し業者に依頼する形式も一般的になっています。

 

以下では、茶事における懐石の基本的な流れをご紹介します。

❙一、最初の膳❙

客人の前に「折敷(膳)」が運ばれ、手前左寄りに「飯椀」、手前右寄りに「汁椀」、中央奥に「向付」(小鉢)が置かれ、「向付」には一般的に生魚のお造りが盛られます。この膳が亭主がそれぞれの客人に手渡され懐石がはじまりとなります。

❙二、煮物椀(椀盛/平碗)❙

懐石のメインとなる料理で魚の切り身やすり身で作った「椀種」に、それに調和した澄まし汁を注ぎ、季節の青野菜と吸い口という柚子や、木の芽などの季節の香味料を添えます。
塗椀に盛られ、客一人一人に供されます。

❙三、焼物❙

主として魚や鶏肉を焼いたものが供されます。
焼物だけでなく、蒸したもの、煮たもの、揚げたものが出されることもあり、一つの鉢か皿に人数分が盛り合されます。

客人は椀盛りの蓋の上に焼物をひと切れ取り置いて順番にまわします。
使用される器は、鉢、皿、手鉢、蓋物などが一般的ですが、焼物重を使うこともあります。

 

❙四、箸洗(小吸物椀)❙

「箸洗」は一汁三菜を終えた後、箸を清め、口中をさっぱり(洗い清めるという意)させるための汁物となりまうす。薄い味付けの汁を、小さな椀(小吸物椀)に入れて客人一人一人に配ります。

❙五、八寸(取肴)❙

一汁三菜が終わったあと、酒を勧めるに出されるのが「八寸」です。

八寸(約24cm)四方の杉木地の器に、二、三種類の酒の肴が盛られます。
八寸は、客人同士が盃を交わしながら食すためのものであり、懐石の中でも特に風情を楽しむ一品とされています。

 

❙六、香の物と湯斗(湯桶/湯次)❙

​懐石の締めくくりとして飯椀を清めるために出されるのが「香の物」と「湯斗」です。香の物(漬物)とともに、飯釜のおこげに湯を注ぎ、おこげを湯漬けにし、お茶漬けのようにして食します。この最後の一品によって、懐石の流れが完結し、いよいよ茶の湯へと移行します。

​懐石は、単なる食事ではなく、茶事の一環として亭主が心を込めてもてなすための重要な儀式のひとつです。一品ごとに季節の趣を取り入れ、器の美しさとともに、客人に楽しんでもらうことが茶道における「もてなしの心」となります。

❙茶会と茶事 ~ 茶会 ~

今日の茶道においては、客人を茶室に招き、薄茶一服にてもてなす会を「茶会」と呼びますがこれは近年確立されたもので、かつては「茶事」も含めて広く「茶会」と呼ばれていました。

今日の「茶会」は「茶事」を基本としつつ「炭手前」や「茶事懐石」を省略し、手軽に催すことのできる主に薄茶だけを供する形式が一般的となりました。

ただし、濃茶や簡単な料理を出す略式茶事風の茶会も行われておりその趣向は多様です。

また数十人~数百人の客人を招く大規模な茶会は「大寄茶会」とも呼ばれ今日の「茶会」の多くは「大寄茶会」を指し呼ばれることが多いです。

今日の茶会の形式はさまざまで以下のようなものがあります。

・点て出しによる薄茶一服のみの茶会

・数席にて薄茶数服を頂く茶会

・数席にて濃茶と薄茶を喫する茶会

和菓子はもちろんのこと軽い軽食である「点心(お弁当など)」が出される会まで今日では場所も茶室に限らず、さまざまなスタイルの茶会が催されています。

また今日の茶会は茶道修練者だけでなく茶道初心者や茶道未経験者まで気軽に参加できるイベントとして広く普及しており

・都道府県や地域コミュニティ主催の茶会

・美術館、展示会に付随する形での立礼棚を使用した点て出し茶会(呈茶席)

​これらの形式は、茶道をより身近にカジュアルに楽しめる場として、幅広い年齢層や初心者にも親しまれています。特に立礼棚を使用した点て出し形式は、椅子とテーブルで行われるため、正座が難しい方にも配慮されています。

 

​茶会は、茶道の精神である「和敬清寂」を体現する場であり、特に亭主と客人の間に生まれる一期一会の心がけは、現代社会においても大切にされています。

また茶会は単なる文化体験にとどまらず、日常を離れた静謐な時間を楽しみ、人とのつながりを深める場としての役割も果たしています。


このように、茶会は時代とともにその形を変えながらも、茶道本来の精神を受け継ぎ、今日に生き続け次の世代へ受け継がれていきます。

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