top of page
4.png

千利休宗易

06.利休七則 

❙はじめに ~ 利休七則 ~

「千利休宗易」では『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)(1522年-1591年)』の出自からゆかりの人々まで、全10回にわたり解説し、『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)』が茶の湯に遺した教えや功績を詳しくご紹介します。

「利休七則」では、『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)』が茶道における心得として示した七つの教えについて詳しくご紹介します。

『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)』は、「最も簡単なことこそ、最も難しい」と説き、日常の中にこそ茶の湯の精神が息づいていることを伝えました。「利休七則」は、茶道に限らず、日々の暮らしにも通じる大切な心得とされています。

それでは、「利休七則」について詳しく見ていきましょう。

❙利休七則 ~ 利休七則とは? ~

『利休七則』とは茶の湯の大成者である『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)(1522年-1591年)』が茶道の精神を要約した標語。

これは「利休四規七則」の中の「七則」にあたり、茶道における心得を示した7つの言葉からなる教えです。

 

「​利休七則」の解説の前に、『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)」が茶の湯の心得について説いた逸話をご紹介します。

ある時、高弟の一人が「千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)」に「茶の湯で心得ておくべきものは何でしょうか?」と尋ねたところ「千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)」は次のように答えました。

「茶ハイカニモ涼シキヤ(ヨ)ウニ、冬ハイカニモアタタカニ、​炭ハ湯ノワクヤ(ヨ)ウニ、茶ハ服ノヨキヤ(ヨ)ウニ、コレニテ秘事ハスミ候」

訳)「茶は、夏はできるだけ涼しげに、冬はできるだけ暖かく点てなさい。
炭は湯が適温で湧くようにくべ、茶は客が心地よく飲めるように点てること。
これだけ守れば、茶道の奥義はすべて尽くされています。」

それを聞いた高弟は驚き「そのような事は誰もが知っている事ではありませんか?」と告げました。

​すると『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)」は静かにこう答えた。

「では、あなたが私の言ったことにかなう茶ができたなら、本日より、私はあなたの弟子になりましょう」

​​後日、この話を聞『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)」の参禅の師である『大徳寺百十七世/古渓宗陳(1532年-1597年)』は『千家開祖/抛筌斎千宗易(利休)」の答えに賛同しこう説いた。

 

「誰にでもわかっていることですが、いざ実行するすることは大変難しいことですと」

この逸話が物語るように「最も簡単であることが最も難しいことである」と説いており、この教えは茶道以外の日常生活にも通じる心得となります。

❙利休七則 ~ 利休七則 ~

茶は服のよきように、

炭は湯の沸わくように、

夏は涼すずしく冬は暖あたたかに、

花は野にあるように、

刻限は早めに、

降ふらずとも雨の用意、

相客に心せよ。

 

以下に、利休七則を構成する各語の解釈についてご紹介します。

❚ 一、 茶は服のよきように ❚

茶を点てる際、自分の点てやすいように点てるのではなく、客人にとっておいしい一服を点てることが大切です。

たとえどんなに素晴らしい道具を用いて、完璧な点前であったとしても、そこに「客人においしい一服を差し上げたい」という気持ちがなければ意味を成しません。このように、客人の気持ちを考え、心をこめて茶を点てることが大切であり、客人もその亭主の心に感謝してお互いの心を通わせた時に「服のよき」茶となることを教えています。

❚ 二、 炭は湯の沸くように ❚

おいしい茶を点てるためには、湯加減が大切です。

そのためには炭をただ決められた通りに置くだけではなく、「どのように置けばよりよく火が熾こるのか?」をよく理解して炭を置くこと大切です。

これもいざ実行に移すとなかなか難しいことであり、炭の扱いにも「客人においしい一服を差し上げたい」という心が大切さであると教えています。

❚ 三、 花は野にあるように ❚

茶道における「花」は自然に咲く花の本来の姿が最も美しいとされています。

茶席に飾る花は、過度な技巧は加えず、「花の持つ生命力」と「本来の美しさ」を活かすことが重要です。作り込まれた美ではなく、自然のままの生命を生かし尊ぶことの大切さを教えています。

❚ 四、 夏は涼しく冬は暖かに ❚

茶道では、季節の移ろいやその恵みに感謝する心を大切にします。

夏には風炉を、冬には炉を用い、また道具の取り合わせや、もてなす茶菓子などを工夫することで、涼しさや暖かさを演出します。茶室の設えや道具の取り合わせを工夫することで、客人に「快適なひとときを提供する」ことが重要です。万物の事象と共に共存する大切さを教えています。

❚ 五、 刻限は早めに ❚

茶道だけにかぎらず時間にゆとりを持って早めに準備をすすめることは、心に余裕を生み、その一会をよりよいものにする要素になります。

また自身の心にゆとりができることで相手の時間も大切にすることができます。

茶席での一期一会をより良いものにするとともに時を大切にすることを教えています。

❚六、 降らずとも雨の用意 ❚

雨に例えた教えであるが何事においても準備を怠らず、どんな状況にも対応できる心構えが大切です。茶道では、日頃の修練を怠らず、常に万全の準備をすることで何事にも落ち着き臨機応変な対応ができると教えています。

❚ 七、 相客に心せよ ❚

茶席では亭主と客人の関係だけでなく、同席の客人同士の心遣いも大切な要素です。互いに尊重し、思いやる心を持つことは一期一会の精神と深く結びついています。茶道に限らず、日常生活においてもお互いが相手を思いやる心があれば、おのずと素晴らしい時間が訪れるということを教えています。

「利休七則」は、単なる茶道の作法ではなく、人生そのものに通じる心得で、日々の暮らしにおいて意識すべき「心のあり方」を示しています。

「最も簡単なことこそ、最も難しい。」​茶の湯を通じて、私たちの生き方そのものを見つめ直すこと――それこそが、『利休七則』の真の意義ではないでしょうか。

bottom of page